第24部 確率分布のRG――Gaussian basin、stable law、収束補正
1. block和を変換として定義する
まず平均0、または対称でlocation shiftを必要としない独立同分布な確率変数 \(X_1,\ldots,X_b\) の分布を \(p\) とし、再尺度化した和
\[ Y=b^{-1/\alpha}\sum_{i=1}^bX_i \]
の分布を \(T_{b,\alpha}[p]\) とする。特性関数 \(\varphi(k)=\mathbb E[e^{ikX}]\) は
\[ \varphi_{T[p]}(k) =\varphi(k/b^{1/\alpha})^b \]
と変換する。統計力学のblock spinと同じく、合成、再尺度化、固定点、basin of attractionを問える。
一般の分布では規格化和からcentering列 \(a_b\) を引き、\(Y=b^{-1/\alpha}(\sum_iX_i-a_b)\) とする。平均が有限なら通常 \(a_b=b\mathbb E[X]\) を用いる。中心化を忘れると平均方向はrelevantで、反復ごとに増幅される。
2. 有限分散とGaussian固定点
平均0、分散 \(\sigma^2<\infty\) なら \(\alpha=2\) を選ぶ。原点近傍で
\[ \log\varphi(k) =-\frac{\sigma^2k^2}{2}+o(k^2) \]
だから
\[ b\log\varphi(k/\sqrt b) \longrightarrow-\frac{\sigma^2k^2}{2}. \]
Gaussian特性関数へ収束する。有限分散domainでは、分布の歪度や尖度など多くのmicroscopic detailが規格化和のleading limitから消える。
高次cumulantが存在する解析的部分classでは
\[ \kappa_n'=b^{1-n/2}\kappa_n. \]
\(n>2\) はirrelevant、分散は規格化で固定、平均は中心化で除く。この固有値表示は見通しがよいが、古典的CLT自体は全高次momentを要求しない。
3. 収束速度とcorrection to scaling
三次絶対moment \(\rho=\mathbb E|X|^3<\infty\) があれば、Berry–Esseen型評価は規格化和の累積分布 \(F_n\) と標準Gaussian \(\phi\) の差を
\[ \sup_x|F_n(x)-\Phi(x)| \le \frac{C\rho}{\sigma^3\sqrt n} \]
と抑える。これは固定点への接近速度がleading irrelevant dataと仮定に依存する具体例である。定数 \(C\) の最良値を本章では必要としない。
十分なmomentと正則性があればEdgeworth展開により、歪度に比例する \(n^{-1/2}\) 補正、尖度や歪度二乗に比例する \(n^{-1}\) 補正を系統化できる。ただしtail全域で一様に有効とは限らず、有限次数展開を正の確率密度として扱えるとも限らない。
4. 無限分散とstable固定点
tailが重く分散が発散する場合、\(\sqrt n\) 規格化は適切でない。\(0<\alpha<2\) の対称stable lawの代表的特性関数は
\[ \varphi_*(k)=\exp(-c|k|^\alpha) \]
である。実際
\[ \varphi_*(k/b^{1/\alpha})^b =\exp\left[-bc\frac{|k|^\alpha}{b}\right] =\varphi_*(k) \]
だから \(T_{b,\alpha}\) の固定点である。\(\alpha=2\) はGaussianに対応し、\(\alpha<2\) では分散が有限でない。
したがって「和を取れば常にGaussian」は誤りである。初期分布のtailとnorming sequenceがどのstable lawのbasinへ入るかを決める。さらに非対称stable lawにはskewnessとlocation parameterがあり、上の式は対称な最小例である。
5. generalized CLTの仮定
単に分散が無限というだけで同じ \(\alpha\)-stable lawへ収束するわけではない。tailのregular variationと左右tailの比、適切な中心化列・規格化列などdomain-of-attraction条件が必要である。
逆に有限分散でも収束速度は任意に遅くなりうる。有限sampleでGaussianに見えないことだけから、非Gaussian極限を結論してはいけない。固定点の同定とcrossover scaleの推定を分ける必要がある。
6. 独立性を外すと何が変わるか
相関した変数の和の分散は
\[ \operatorname{Var}\left(\sum_{i=1}^nX_i\right) =n\operatorname{Var}(X_0) +2\sum_{r=1}^{n-1}(n-r)\operatorname{Cov}(X_0,X_r). \]
相関が十分速く減衰してcovariance和が収束すれば、追加条件の下で \(n^{1/2}\) scalingとGaussian極限が残ることがある。臨界点のように相関がpower lawで長距離に及ぶと、分散のscale自体が変わり、block変数は非Gaussianな相互作用固定点へ流れうる。
これが「臨界現象はCLTの破れ」と言われる一つの意味である。ただし相関があるだけでCLTが必ず破れるわけではなく、mixing条件や相関のsummabilityを調べる必要がある。
7. large deviationとの違い
CLTは平均近傍の典型的な \(O(n^{1/2})\) 揺らぎを記述する。large deviation principleは標本平均が \(O(1)\) ずれる稀な事象を
\[ \mathbb P\left(\frac1n\sum_iX_i\approx x\right) \asymp e^{-nI(x)} \]
のrate function \(I(x)\) で記述する。両者は同じ分布の異なるscaling regimeであり、Gaussian fixed pointだけでtail確率全体を近似してはいけない。
自由エネルギーとcumulant generating functionのLegendre構造はlarge deviationと統計力学を結ぶが、非凸性、相共存、非解析性では単純なLegendre変換の解釈に注意が要る。
8. 類比の到達点と限界
確率分布RGはuniversalityを最も透明に示す模型の一つである。しかし独立和ではblock間相互作用が生成されず、臨界場のRGより単純である。
- Gaussian CLT固定点: 独立性、有限分散、\(\sqrt n\) scaling。
- stable固定点: heavy tail、\(n^{1/\alpha}\) scaling。
- 臨界固定点: 長距離相関、空間構造、局所相互作用、anomalous dimension。
共通するのは「粗視化後に形を保つ分布」と「初期条件のbasin」であり、固定点の内容まで同一ではない。確率論との構造的対応は Jona-Lasinio (2000) を参照。
9. 証拠水準
- 有限分散i.i.d. CLT: [Rigorous theorem under finite-variance assumptions]。
- Berry–Esseen評価: [Rigorous bound under a finite third absolute moment]。
- stable lawへの一般化CLT: [Rigorous theorem under domain-of-attraction and centering assumptions]。
- 長距離相関から非Gaussian fixed pointが生じるという一般論: 個々の依存構造に追加条件を要する [Structural analogy / model-dependent theorem]。
CLT、stable law、収束速度の定理と仮定は Feller, Vol. II を参照する。
章末整理
この章で分かったこと
block和のRGにはGaussianだけでなくstable固定点があり、moment・tail・依存性がbasinと収束速度を決める。
その結果、何が説明できるようになったか
CLTの普遍性、correction to scaling、heavy-tail例外、臨界相関による非Gaussian極限を一つの枠組みで比較できる。
まだ説明できていないこと
依存変数CLTの厳密なmixing条件、stable lawの完全分類、確率場のtightness証明は未展開である。
よくある誤解
- 独立な和が常に \(\sqrt n\) でGaussianへ収束するとは限らない。
- 高次cumulant展開は有限分散CLTの必要条件ではない。
- CLTはlarge-deviation tail全体を記述しない。
次に自然に出てくる疑問
二次元ではscale invarianceがVirasoro対称性へ拡張すると、相関関数とoperator spectrumはどこまで決まるか。